Work
10『かたちだけの愛』
Publication date: 2010/12/10
ネット全盛時代に、身体への再帰を先取りし、新しい愛のデザインを試みた初の新聞小説。
プロダクト・デザイナーの相良は、交通事故で片足を切断した女優のために、「本物よりも美しい義足」を作ることを依頼される。彼女をパリコレの舞台に立たせるまでの再生の過程は、かつて〝奔放〟な母に捨てられた過去を持つ相良自身が、その喪失感と向き合い、愛を恢復する時間でもあった。作者のデザインについての透徹した理解が、芸能界の華やぎと寂寥を背景に、陰翳豊かな世界観に結実している。デジタル時代の物質的世界への再帰を先駆する一方、恋愛を、分人主義的に再定義して、後の『マチネの終わりに』を予告した。
First Appearance
『読売新聞』夕刊 2009年7月22日 - 2010年7月9日